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執筆者の写真櫻井愛子

ウィーン国立音大の声楽科の入試について【入試の前に受けておきたいVorsingen(フォアズィンゲン)って何?】

更新日:2023年3月5日

こんにちは。ソプラノの櫻井愛子です。


ウィーンで過ごした3年間は、私にとって刺激にあふれた日々でした。思い出は数知れませんが、やはりウィーン国立音大で学んだことは私にとって大きな宝となりました。このコラムはただの雑記録程度ですが、今後ウィーン国立音大への留学を目指す方のちょっとした参考になれば幸いです。 当記事では、入試前に避けては通れない【Vorsingen】についてお話します。

Vorsingen(フォアズィンゲン)について

つきたい先生がどのような方なのか知りたい時、レッスンを受ける以外にも、実はタダで先生に声を聴いてもらえる有難いシステムがあります。Vorsingen(フォアジンゲン、「オーディション」の意味)というもので、先生の前で一声聞かせた後「門下に入れてもらいたい」とお話ができる機会になります。ただレッスンではないので、1曲歌って、少し話す程度で10分くらいで終わります。


Vorsingenのアポイントのやり方は簡単です。 つきたい先生にレッスンのアポイントメントと同じ要領(こちらの記事参照)で連絡し、「お時間あればVorsingenしてください」とお願いする。 これだけです。 ・ウィーン国立音大に入学して先生の門下に入りたい旨 ・いつ入試を受けるつもりか ※入試が年に2,3回ある も追記すると良いかもしれません。

パンデミック以前はこのVorsingenをつきたい先生の元で入試前に必ず受けるのが普通でした。今は色々と難しいですが、つきたい先生に「Vorsingenを受けたい」と言えば「次の入試を受けて自分の門下に入りたい」という意思表示になります。連絡を取った時点で「もう次のゼメスターは私のクラスは一杯なの」と断られることもありますが、「○日の○時に来て」と約束を取り付けられることもあります。 Vorsingenの最大の意義は、「入試の前に」門下に入れてもらう約束をすることなので、声を聴いてもらった後、「今度の入試でウィーン音大に合格したらあなたのクラスに入れてくれますか?」と聞きましょう。「まだクラスに空き(Platz)があるから入れるよ。入試頑張って」と言われたらVorsingenは成功です。もう受験は半分合格したようなものです! もしも空きが無い、など断られてしまったら、ご縁がなかったと気持ちを切り替えて、別の先生にアポイントを取りましょう!





どの先生とまずVorsingenのアポイントメントを取るべき?


ウィーン国立音大のMasterstudium(修士課程)を受験しようと考えていた場合、実はアポを取るべき先生の順番が存在します。 Masterの場合、Gesang科とそれぞれの専攻(リート科、オペラ科etc.)から1人ずつ、計2人の先生につくことができます。つまり、それぞれの先生の元でVorsingenをパスして「門下に入ってもいいよ」と約束してもらう必要があるということです。 もしもツテがある先生が一人もいない場合は、まずGesang科の先生からアポをとりましょう。 そしてGesang科の先生のVorsingenをパスしてから、専攻の先生にアポを取りましょう。 この順番を間違えると、折角Vorsingenを受けても「まずはGesangの先生のところでOKもらってきてね」と突き返されるのでご注意ください。


先生との事前のコンタクトなしに受験した場合


パンデミックもあり、事前に先生とコンタクトを取るのは難しそう...と思っている方、ご安心ください。パンデミック以前も以後も、先生との事前のコンタクトなく受験し合格された方々もいらっしゃります。 ある方は受験した際に希望の先生を明記していなかったところ、試験官の一人が「私のクラスで取るわ」とおっしゃり、その試験官のクラスに入ることになったそうです。 別の方はパンデミックでウィーンに行くことが難しく、事前のコンタクトなしにオンライン上のみで受験し合格しました。その方は希望通りの先生のクラスに入ることが出来ました。 このような方々もいらっしゃいますが、通常はレッスンあるいはVorsingenで言わば「内定」を出してもらうのが安全策と言えます。 また、「内定」をもらったからと言って、入試で試験官から半数以上のOKが出なければ、その先生がどんなに取りたくても不合格となってしまうので、受験本番も気を抜かず頑張りましょう。





個人的体験


 私は日本でのお知り合いから紹介していただいた、Gesang科のリーンバッハー先生にまずはレッスンを受けたい旨のアポイントメントを取ると、快く応じてくださいました。そして、一度レッスンを受けた時に運よく「私のクラスに入ってもいい」と言われました。「内定」を貰った後も他の先生のレッスンをいくつか聴講させていただきましたが(聴講も基本突撃OKでした)、結局懇切丁寧にテクニックを教えてくださるリーンバッハー先生のレッスンが一番自分に合っていると感じました。なので受験の際に提出する書類に「どの先生につきたいか」を書く欄があるのですが、そこに先生のお名前を記入しました。


 その後リート・オラトリオ科の先生全員(3人)にメールでアポイントを取り声を聴いてもらいましたが、受け入れると言ってくださったのはフォンターナ先生だけでした。結果的に一択でしたが、それでも個人的にはフォンターナ門下に入れたことはとてもラッキーだったと思います。几帳面で面倒見の良いフォンターナ先生は、普段のレッスンの他にも、特にブラームス国際コンクールの出場の際に、元審査員としての知見を惜しみなく与えてくださいました(2020年にご退官されました)。そしてコレペティの先生方、特に厳しくも温かくひたすら私のドイツ語を叩いてくださったパイアー先生には心から感謝しています。



(写真はリーンバッハー門下の集合写真)



最後までお読みいただきありがとうございました!

ご感想・ご質問などのコメントもお待ちしております。


櫻井愛子




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