こんにちは。ソプラノの櫻井愛子です。
ウィーンで過ごした3年間は、私にとって刺激にあふれた日々でした。思い出は数知れませんが、やはりウィーン国立音大で学んだことは私にとって大きな宝となりました。このコラムはただの雑記録程度ですが、今後ウィーン音大への留学を目指す方のちょっとした参考になれば幸いです。 ※注意 本記事では、2017年に筆者が受験したリート・オラトリオ専攻(現リート・オラトリオ・コンサート専攻)の入試内容について紹介しています。試験当日の進行の内容は2017年当時のものです。 最新のカリキュラムや入試について詳しくはこちらのページをご覧ください。(2022年2月現在のページ) Gesang Konzertfach und Musiktheaterregie Lied - Oratorium-Konzert - MA | mdw - Universität für Musik und darstellende Kunst Wien
入試内容
ウィーン国立音大の入試(Zulassungsprüfung)は、日本の大学と色々と違うところがありました。
●手続き
とても簡単でした。大学の事務所(Anton-Webern-Platz校舎)に行って「入試を受けたいのですが」と言うと、紙を一枚ぺらっともらえました。そこで自分の名前と受験する専攻、つきたい先生の名前を記入して提出して終了。
なお2022年現在はパンデミックのためオンラインでの申し込みとなっています。 https://online.mdw.ac.at/mdw_online/webnav.ini 上記のURLから ・試験で歌う曲目リスト (伴奏者名を含む) • 現在使用してるパスポート (オプション) • これまでの音楽的な経歴 ・成績証明書と学士課程卒業証明書 ・学士課程卒業証明書の信頼に足る翻訳されたもののコピー をアップロードする必要があるようです。 詳しいご質問は大学のアドレスへ直接ご質問ください→zulassungspruefung@mdw.ac.at
●入試期間
大体2~3月(3月に入学する人用)と6月、9月(10月に入学する人用)に行われます。年によって時期が違うので、ホームページを逐一チェックすることをおすすめします。 2022年2月現在の声楽科入試についてのページはこちら→Zulassungsprüfungstermine | Institut für Gesang und Musiktheater (mdw.ac.at)
●曲目リストとは
受験申し込みの際に「Vorbereitete Werke(曲目リスト)」の提出を求められます。私の時代は3か国語入った歌曲6曲に、宗教曲(ミサ曲・オラトリオなど)から4曲書いたものを受験時に審査の先生に渡しました。なお指定のフォーマットなどはなく、手書きでもなんでもOK(流石オーストリア、緩い)で、ちなみに私は手書きで出しました。
あと、伴奏者は学校で用意してくれていますが、自分で連れてくることも可能でした。
2022年現在では、歌曲4曲、アリア4曲の計8曲を提出することが求められています。
・現代曲1曲
・異なるキャラクターのオラトリオアリアあるいはコンサートアリア4曲
・ドイツ語2曲
・少なくとも5人の異なる作曲家によって書かれた曲
を含むこと、と書かれています。
そして歌曲については暗譜で、アリアは譜持ちOKです。
また、この曲目リストは事務所に提出する1部と、入試の際試験官に直接手渡す1部を用意しましょう(オンライン入試の場合は異なる可能性大)。
●入試内容
・1次試験
曲目リストから任意に選んだ1曲と、試験官が選んだ1曲を演奏。
・2次試験 ドイツ語(英語も可)での質疑応答(5分程度)
●受験料
タダ!!!!(すごい)
Penzing校舎
入試当日の流れ
ウィーン国立音大の声楽科は、基本Penzingと呼ばれるシェーンブルン宮殿にほど近い校舎で大半の授業を受けます。入試ももれなくPenzingで行われます。
入試の開始時間は公布されるものの、自分の入試の詳しい時間は分からないので、とりあえず入試開始時間10分前に試験会場に向かいましょう(試験は大抵Probe Bühneと呼ばれる、Penzing校舎の一番上の階にある大きめの部屋(376㎡)で行われます)。
Probe Bühneの様子
試験会場の前の壁にぺらっと一枚紙が貼ってあって、そこに受験者の名前が書かれてありますのでそれを見て自分の順番を確かめます。自分の順番が来たら名前を呼ばれて会場に入ります。
自分の名前と何を最初に歌うかを言って、演奏し、その後簡単な質疑応答を受けます(どうしてここで学びたいのか、どんな歌手になりたいのか、といったことを聞かれます)。 そして受験後1,2時間ほど?試験会場の前で待つと、また紙がぺらっと壁に貼られ、そこに手書きで合格者の名前が書いてあります。結果が即日出るのはとても有難かったです。
【恐怖体験】入試に遅刻する
私の場合、自分の順番が20番目ぐらいに書かれてあり、一人5分くらいかかるかと思って 大体70分後ぐらいにもう一度会場を訪れると、なんと自分の順番は過ぎ去っていました。
どういうことかと混乱する私。なんと、受験当日にキャンセルする人がいるせいで、自分の順番は大幅に繰り上がっていたのです。
有難いことに、入試の伴奏をお願いしていたピアニストがウィーン音大のコレペティの先生だったことが幸いし、審査員の先生方にかけあってくれて、一番最後に入試を受けさせてもらえることになりました。
これから現地で受験する方々には、順番に関わらず、試験開始時刻までに発声など全ての準備を終わらせ、試験会場前でひたすら待機することをお勧めします。
それにしても、入試に遅刻したにも関わらず合格させてもらえて本当にラッキーでした。オーストリアの適度な緩さに救われました。
なんとか入試を終えた私でしたが、実際本当に大変だったのは、入学してからでした。入学後のあれこれはまた別の記事に書こうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ご感想・ご質問等のコメントお待ちしております。
櫻井愛子
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