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執筆者の写真櫻井愛子

コロナ禍でのウィーン音大オペラ公演で驚いた6つのこと(2)

更新日:2023年3月5日

こんにちは。ソプラノの櫻井愛子です。


前回の記事はこちら。今回の記事は衣装のことからウィーン音大独自の習慣(?)まで盛り沢山です。是非最後までお付き合いください!



4.手厚いサポーターたち 衣装さん(大学が外部委託した方(オペラ科に常駐の衣装さんがいるにも関わらず!))から採寸したいと連絡があったのは4月初め頃。他のメンバーは2月に済ませていました。初めて自分の衣装のイメージ図を見て、とても嬉しかったのを覚えています。 実際出来上がったのもとても綺麗な色とデザインで、このような衣装を用意していただけると演技の際もテンションが上がります。今回の衣装は何度も採寸を重ねて、歌手それぞれの体にぴったり合うように仕立ててくださったドレスなので、どれだけ動いても(今回の演出ではダンスシーンもあった)胸元などを気にする必要がありませんでした。 公演後、このドレスを購入することも出来ると説明を受けました。オーダーメイドにしてはとても安価な値段を提示してくださいました。


写真はシェーンブルン宮殿の楽屋と衣装です。





5. 大学でクラスター発生、その後の対策 実は3月中旬に、同じ大学内の別のプロジェクトからクラスターが発生し、大学は閉鎖され、そのままイースター休暇が明ける4月中旬まで学校に一切立ち入ることは出来ませんでした。勿論稽古はありませんでした。 4月中旬からようやく稽古が再開しましたが、陰性証明は抗原迅速検査の場合24時間、PCRテストの場合48時間以内のものしか認められないことになりました。なので再開後毎日稽古があったので、毎日鼻に綿棒を入れられる生活が始まりました。「迅速検査」というだけあり15分後に結果が出るけれど、毎日するというのはやはりある程度負担がありました。それでも保険でタダで受けさせていただけるのだから有難い限りでした。 「Alles gurgelt!(みんなでうがいしよう!)」という、家で検体を採取して郵送すると結果がデータで送られてくるうがい式PCR検査も学校の方で手配してくれました。これもタダで、月に8個検査キットをもらうことができます。このキットは本番直前に集中的に使いました。


写真はほぼ毎日通ったシェーンブルン宮殿内の抗原迅速検査場となっているオランジェリー。ウィーン市内に複数ある検査場の中で一番美しいこと間違いなし。

しかし驚くべきことに、陰性証明についてはとても厳しく定められましたが、舞台上でのマスク着用義務はありませんでした(ウィーン国立歌劇場でさえ舞台上でマスクして稽古していると聞いている)!舞台以外は勿論マスク着用義務があったけれど、最早それに意味があったのかは疑問です。稽古時間も9時から17時までのような長時間の拘束かつ20人ぐらいの歌手と過ごすのは正直に言うと軽く恐怖でした。ただ陰性証明の提出は超厳格に求められたので、みんなも提出しているんだなと思うと少し安心できました(というかクラスターに巻き込まれて既に感染済みで抗体持ちの歌手も何人かいました)。



今回のプロジェクトでは、クラスターが同じ大学で起こったとは思えないくらい舞台の上は本当に無法地帯でした。「obstond hoitn (間隔開けて、というウィーン鈍りのドイツ語)」なんて注意喚起スローガンはどこへやら、密。密。密でした。 しかも最後のシーンで、抱き合い、キスをするという演出が付いた時、適当に手で隠して場を濁していたら「本当にやるんだ!」と演出家の指示が。ホ、本気…?と流石の歌手の同僚たちも動揺していました。コロナ以前であればそこまで気にせず受け入れていたと思いますが、やはり今は少し気になってしまいました…。実際どのように切り抜けたかは、今後シェアできるはずの本番の映像をご覧ください!(多分秋ごろ)


写真はフィナーレ。筆者は右端。相手との身長差がものすごかったです。(笑)


6. オーケストラとの合わせ

本番前1週間ほど、学内の学生で構成されたオーケストラとの合わせがありました。 この《ナクソス島のアリアドネ》は、リヒャルト・シュトラウスというドイツの作曲家によって作曲されたオペラです。私は多くのシュトラウスの歌曲を学んできましたが、シュトラウスのオペラ作品には一切手を出していませんでした。 シュトラウスの歌曲の中でもオーケストラ伴奏用に書かれている作品がいくつかあるがどれも素晴らしく美しいです。シュトラウスの作品をより理解するために、彼のオペラやオーケストレーションをより深く味わってみたいと思ったのが、このクレイジーなプロジェクトに参加したいと思った動機でした。



私の考えは正しかったと、オーケストラとの稽古が始まった時に確信しました。実は《ナクソス島のアリアドネ》始め、多くのシュトラウスのオペラをウィーン国立歌劇場で見ていたのですが、やっぱり、2mの距離で楽器の音を聞くのは非常に贅沢な瞬間でした。


写真は別の組のAufzeichnung(本番を兼ねた収録)の休憩の様子。この日この組は悲運なことに18時から23時まで収録が続いたそうです。(私の組は16時から19時で終わりました。ラッキーでした)



番外編


困ったこと・慣れなかったこと


今回の稽古はコロナ禍ということがあり、あらかじめ配られていた稽古日程は全く役立ちませんでした。それで、Facebook(アリアドネのグループがありました。このプロジェクトに関わらずウィーン音大では先生含めFB内で頻繁に重要な連絡が飛び交います)と学内のメールで前日に連絡が来るのですが、これが気付かない。Facebookでは見逃すことが多々あり、何度か稽古時間を間違えました。あと大事な連絡がコメント欄に書いてあって気づかなかったこともありました😢そんな隅から隅まで読まないよ普通... プロジェクトが終了してから、解決策(Facebookのグループの新着記事のチェックの仕方)を見つけました...。でもやっぱり1週間前には稽古のスケジュールが決まっていて欲しかったです。(声楽の先生や実技系の先生も、この直前の連絡によるレッスン時間の変更に振り回されていましたし)



贈り物の習慣


これはウィーン音大独自の習慣なのか分かりませんが、とりあえずオペラの初日に関係者に小さな贈り物をする習慣があります。直接渡す場合もあれば、楽屋に置いておくこともあります。大抵チョコだったり、自分の役に縁のあるようなものを贈ります。例えば前回バルバリーナ役で参加したフィガロの結婚では、伯爵役からピンで留めた小さな手紙を貰いました(第3幕でバルバリーナに伯爵がピン付きのメモを渡すのが元ネタ)。中身は勿論逢引き...ではなく、「Toi toi toi(頑張ろうね)」みたいな内容です。


今回私はエヒョー(やまびこ)という森に住む妖精の役だったので、枝を使って森っぽさを出してみました。コメントを書いた紙に、今回の役のカラーの青色の包み紙のリンツのチョコを入れました。この贈り物、結構考えるの楽しいです。皆さんも是非機会があったらこんな風に楽屋に差し入れをされてはいかがでしょうか?




最後までお読みいただきありがとうございました!

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櫻井愛子

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